第1章 8

このお話はフィクションです。
5人時代も好きですが、批判的に取られる可能性があります。
それでも読んでいただける方のみ、下記へお進みください。








SIDE:CHANGMIN

僕たちの夢だった東京ドーム。

小さな舞台から始めて、とうとうここまで辿り着いた。

日本の言葉を話すようになり、僕らの歌は日本の曲として評価された。

本当は、これからだったんだ。

東京ドームで公演して、これから本格的に駆け上がるはずだったのに。

僕たちの問題が影響してSMTownの中止が決まり、a-nation以降の活動を停止することが決まった。

今の状況はヒョンたちのまわりのせいで、ヒョンたちの意思じゃないと思い込もうとしたのに。

僕たちさえ絆を失わなければ、きっと5人でいられるはずだと。

なのにヒョンたちのうちの二人が、日本でCDを出すことが決まったという。

何も解決していないのに。
問題を起こした張本人が、事務所や事務所の仲間にまで迷惑をかけて、ファンたちを落胆させて。
それでも事務所に断りもせず悠々とCDを出すという。

それでも相変わらず事務所が悪者で、僕たちは裏切り者で。

どんなあり得ないことをしても、ファンも日本もヒョンたちの味方みたいだった。

誰かの思惑通り、僕とユノヒョンは罪人として晒され、けれど真実を口にすることもできないでいた。

だってどんな酷いことをしたとしても、ヒョンたちの身内は一般人だから。
一緒に頑張ってきたメンバーの大切な人たちだから。

ユノヒョンも僕も、黙り込むしかなかった。

だからもう僕は、話すこと自体億劫になった。
5人に戻れるはずもないのに、馬鹿げた小芝居なんてもうごめんだった。

だって僕にはもう、ヒョンたちが5人でいることを望んでいるなんて思えなかったんだ。



ネット上でヒョンたちは、5人が離れることはないとファンにメッセージを送っている。
ファンたちも解散反対の署名運動を起こしたらしい。

もうどれもこれも、バカらしく思えた。

そんな中、僕とユノヒョンへのバッシングはひどくなり、それどころか家族にまで少しずつ被害が広がっていた。

もうなんだか、全部僕のせいに思えてきた。

父さんは学校の先生だから、事情を理解できないまま子供たちは、父さんを悪く言っているはずだ。

母さんは?妹たちは?
みんな心配させないよう、大丈夫しか言わない。

僕があの時、芸能人になることを選ばなければ。
そうすれば、かけなかったはずの迷惑だ。

芸能人になりたいなんて、思っていなかったくせに。
軽々しく選んでこうなった。

だけど。
それでも僕は、3人のヒョンたちと同じことをしようとは思わない。
たとえそうすれば今の事態を回避できるとしても。

ユノヒョンが言ったように僕だって、東方神起を捨ててまで自分を守ろうとは思わなかったんだ。


「チャンミ〜ン」

扉が開いて、能天気に僕の名前を呼びながらユノヒョンが入ってきた。

今までヒョンたちと何か話していたみたいだけど、僕にはどうでもよかった。

「何ボケ〜っとしてんだよ。ポテチ食う?チャンミンの好きな辛いやつ」

僕は声を出す気にもならなくて、黙って首を横に振った。

「DVD見る?チャンミン好きそうなやつ選んできたんだ。ほら」

ベッドの上で膝を抱えてる僕の足元に、バカみたいな枚数のDVDを並べて。

今あっちで辛い話をして、今度は僕を気遣って。

この人がいなかったら、僕はとうに人間不信になってたと思う。
ヒョンたちのやってることに呆れて、信じられなくなって。
でもこの人が側にいてくれて、世の中にはこんな人もいるんだと思わせてくれるから、僕は立ってられるんだと思う。

「なんでもいいです。ユノヒョンの好きなやつかけてくれれば」
「そーか?んーどれにすっかなぁ」

甘えられれば構うくせに、本当は自分から構うのはあまり得意じゃない。
自分から寄って行くのは、気を使ってる時だ。
人懐っこいようで、礼儀を重んじるから親しくなりきれなくて。
一度話せば友達だと言うくせに、結局いつも気を使ってるのは自分の方なんだ。

ホント不器用で。
でも、だからこそ信じられる。
手を抜かずに一生懸命生きてる感じがするんだ。

「ねぇ、ユノヒョン」
「ん?」

本当のユノヒョンて、どれだろう?
ふとそんなことを思った。

「僕には、気を使う必要ないですよ?」
「え?」
「普通でいいです」
「俺、そんなにわざとらしいか?」
「そうじゃなくて。気を使わなくても、いてくれるだけでいいって話です」

言った途端、ユノヒョンは照れ臭そうにしながら、それでも黙ってDVDをデッキに入れた。

ユノヒョンはまだ、3人のヒョンが戻ってくると信じてるみたいだった。
でもそれは、ただの責任感だと思う。
諦めちゃダメだって、自分で自分に言い聞かせてるんだ。

「俺が諦めたら、あいつらの帰る場所がなくなるから」

きっとユノヒョンはそう言うんだ。

こんな思いするのは俺だけでいい。
そう言ってユノヒョンは、いつも一番大変な道を選ぶ。

見捨ててしまえば楽なんだ。
無理してしゃべらなくてもよくなる。
でも、それをユノヒョンがやると全てが終わるんだ。
ユノヒョン自身もそれがわかってるんだろう。

だから諦めることができない。

背中を向けたユノヒョンに、一体どれだけの思いを背負っているのだろうと思う。

「僕がいるじゃないですか。それじゃダメですか?」

無意識に、そう口をついた言葉はユノヒョンに届いた。

「…チャンミン、東方神起は5人じゃないとダメなんだ」

この先の事を具体的に考えたわけじゃない。
ただ、出て行くなら好きにさせればいいじゃないか、そう思ったから言っただけだった。

でも僕は確かに、ユノヒョンの言葉にショックを受けた。

僕だけじゃ、ダメなんだ。

そう思ったら、胸の奥が苦しくなった。
だって僕はこの時、ユノヒョンの言葉の本当の意味が理解できなかったから。




もうすぐ活動が停止する。
そんな状況でのa-nationで、バックステージ用の撮影が入った。

いつもなら普通にしているだけで、仲のいい僕たちの姿を見せることができた。

けれどカメラを前にしたこの日、とうとう僕たちはいつも通りではいられなくなっていた。

ユノヒョンと、ヒョンたちのうちまだ5人でいられると信じている1人が懸命にインタビューに答えている。
けれどあと二人のメンバーは日本でのCD発売が決まっていて、この場を取り繕うことさえできずにいた。

5人でいたいと言いながら、事務所を無視して日本の活動をするんだ。
白々しく仲の良さなどアピールできるわけもなくて。

そんな中僕は、ユノヒョンの背中に縋り付きたい衝動を堪えながら、懸命にインタビューに答えた。

笑えてなくてもいい。
ここで黙り込んで惨めな姿など晒したくはなかった。

ユノヒョンの話す声が、いつも通り優しくて。
僕を背に庇うような背中が目の前にあって。

チャンミン大丈夫か?
あと少しだからな?
俺が話すから無理しなくていいんだぞ?

そんなありもしない声が聞こえて、僕は泣きたくて仕方なかった。

ユノヒョン、僕は笑えたかな?
ちゃんと話せてたかな?
僕たちの思いは、誰かに届くかな?

僕は間違ってなんかいないよね?
だって僕の隣に、あなたがいるんだから。



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