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本家「東方神起~Red Ocean of eternity~

あなたのいいところ 1

ここでのお話はアタシの作ったフィクションです。
実際のエピソードをヒントにしたものもありますが
あくまでアタシの中にいるユノとチャンミンのお話です。








SIDE:CHANGMIN


「いいかげんにしろチャンミン!」

リハーサル中のライブ会場で、ユノの怒鳴り声が響き渡った。

物凄く珍しい光景だった。

ユノが声を荒げるほど怒るなんて僕ですらほとんど見たことがない。
ましてや僕を人前で怒鳴りつけるなんて、今まであったか?と思う。

ユノは、自分が我慢して収まることならどんなことでも飲み込んでしまう。
普通なら言わないと気がおさまらないはずのことでも、ユノにとっては我慢した方が楽なんだ。

平和主義でも気が弱いわけでもない。

これはユノの優しさなんだ。

そして言わない選択をできるユノは、僕なんかよりずっと強いと思う。
自己犠牲なんて、そんな選択ができるほど僕は器がでかくない。

今ユノが怒ってるのは、ここにいるみんなを思ってだ。

わかってる。
ユノが怒るのは誰かを思ってのことだって。
そして怒らせた理由は間違いなく僕にある。

「おいユノ、落ち着け」

SAMさんが、ユノを宥めるように割って入った。

ユノは黙って、座り込んでる僕を見下ろしている。
そして僕は、そんなユノを見上げて睨みつけていた。

ユノは正しい。
でも引かない。
悪いのは僕だけど、今回だけは絶対ユノに謝る気はなかった。

「よし、一旦休憩挟もう。30分後に集合だ。解散!」

SAMさんの声で、みんなバラバラに散らばった。
SONNYさんが立ち尽くして動こうとしないユノの肩に、促すように手を置いた。

「ユノ、行こう」

言われて、ユノは足を踏み出した。
すれ違いざまに見たユノの横顔は、悲しげに曇っていた。

気配が遠のいて、座り込んだままの僕の横に、SAMさんが並んで腰を下ろした。

「どうしたチャンミン、何が気に入らないんだ?」
「あー、ごめんなさい。雰囲気悪くしてしまって」
「なんでユノが怒ったのかはわかってんだろ?」
「はい。みんなの前で僕が態度悪かったからです」

僕は気に入らないことがあると顔に出る。
だからって周りの雰囲気が悪くなるほど極端なことはしない。

そんなことになるくらいなら口に出す。

普段なら。

「俺たちは気にしないけど、ユノはそーゆーの嫌がるからな」
「はい。わかっててやりました。だってユノが悪い」
「ユノがなんかしたのか?」
「なんかしたんじゃなくて、なんにもしないから腹が立ちました」
「どーゆーことだよ」

本当は、態度を悪くするほどのことじゃなかった。
口で言えば済むことだったんだ。

でも、それで解決することばかりじゃないと思った。

「だって、さっきのフォーメーション、直してほしいくせに言わないから」
「そうなのか?」
「はい」
「あいつ、そんな顔してたか?」
「してません。ユノは絶対顔に出さない」
「だったらなんでわかるんだよ」
「あー、それはー、…わかりません。でもそうなんです」

そんなものは感覚だから、何でと聞かれても何となくとしか言えないけど。
だって、一緒に暮らしてもう10年になるんだ。
嫌でも考えてる事くらいわかる。

今回のツアーは2人になって2度目の日本ツアーで、前回固めたスタッフとの信頼関係をさらに高めたい思いは僕にもある。

それはユノも同じはずで、だからなるべくみんなの意見を尊重したいのはわかるんだ。

わかるんだけど。

「だからってなんでチャンミンが怒るんだよ」

何でって、腹が立つから仕方が無い。

「だって、ユノがいいと思った方がいいに決まってるから」

ユノは自分をわかってない。
そこに腹が立つ。

「はっきり言うなーww」

SAMさんの豪快に笑う声で、僕はハッとした。

「あー、すいませんっ!そんなつもりじゃなくて!」
「わかってるって。俺よりユノのセンスの方がいい時なんていくらでもある」

SAMさんはわかってくれている。
誰よりもユノのパフォーマンスを認めてくれている人だから。
ユノの人間性も努力も、ちゃんとわかってくれてるから。

なのに。

これだけ努力して、みんなに感謝して、誰よりもステージを愛しているユノの意見を素直に聞けない人なんてここにはいない。

それをわかってほしかったんだ。

「遠慮せずに胸を張って言えばいいのにと思ったけど、どーせ言わないから怒らせてやろうと思って」
「喧嘩した勢いで本音吐かせてやろうって?」
「あー、はいはい。そうです、それです」
「チャンミンがイライラする気持ちはわかるけど、ユノには苦痛だと思うぞ?」

そうなんだ。問題はそこなんだ。

「…ですよねー」

ユノは強過ぎるんだ。
スタッフの案を否定せずに、求められた以上の結果を出そうとする。
実際、おかしいと思った振付さえ、ユノが踊れば個性的という解釈に変わってしまう。

でもユノの中にはスタッフ以上にいいものがあって、それをたくさん無駄にしてきたはずなんだ。

でもSAMさんの言うように、それを口に出すのはユノにとって苦痛に違いない。

ユノは優しい。
人を否定した後、物凄く反省するに違いない。

僕はユノに、酷いことをしたのかな?
そう思った途端、急激に後悔した。

黙り込んだ僕に、SAMさんが言う。

「ユノは俺たち日本のスタッフに、心から感謝してくれてる。だから全力で絆を守ろうとしてくれてるんだ。でも、チャンミンの言いたい事もわかる。遠慮を乗り越えて今以上の信頼関係を作りたいんだろ?」
「そうなんです」

SAMさんは日本語がうまい。
さすが日本人だ。

「そこをなんとかできるのは、チャンミンしかいない。頑張れ」

そう言ってSAMさんは、にっこり笑って僕の肩を叩いた。

「僕ですか?えー?嫌だ。めんどくさい」

本気で嫌そうな顔をしたら。

「うそつけー。ユノのためならなんだってできるくせに」
「なんでそうなりますか?お?僕はそんなに優しくない」
「そう思ってるのはチャンミンだけだ。とにかく、ユノは任せたからな」

僕にユノを任せる?
そんなことされても困る。
ユノはとにかくめんどくさい。

めんどくさいんだけど。

「わっかりましたー」

でもユノを他の誰かに任せるのは、めんどくさい以上に嫌だった。



控室に戻ったら、ユノはダンサーさんたちとふざけて踊っていた。
自分のせいでリハが頓挫したことを申し訳なく思って、場を盛り上げているに違いない。

だから僕は扉を開けて踏み入ったそこで室内を見渡し、大声で言った。

「ごめんなさいっ!すいませんでしたっ!」

腰を90度に折って、僕なりに誠心誠意謝った。

僕の大声にみんな振り向いて、即座に笑みを返してくれる。
それに答えて僕も笑顔になって、でもユノの視線にだけは気付いてても目を合わせることができなかった。



ユノはとても人を気遣う。
感謝の言葉も謝罪の言葉も、口にすることを躊躇わない。

でも実は僕に対してだけは、案外言葉が重くなる。

今も実はユノが僕を気にしてる気配を感じてて、それが妙に居心地悪い。
でもユノの重い口が開くのを待ってたら、いつになるのかわからないし。

だから僕はパイプ椅子を引き摺って、ユノが座ってる横に並べて座った。
いつもより近めに椅子を置いたら、肩先が触れたけどそのままでいる。

ユノも触れたからといって、離れようとはしなかった。

「休憩って、あと何分?」

ユノにそう聞かれて、壁の時計に目をやる。

「多分、あと10分?」
「そっか」

で、黙り込む。

だから仕方なく

「ラーメン食べたい」

僕がそう言ったら。

「昨日食ったじゃん」

とユノが答えた。

そうじゃない。
そこは「じゃあ帰りに食いに行こう」って言えば約束ができて、それで仲直りが成立するとこだろう。

空気読め。

無理か。

「嫌だ。ラーメンがいい。ラーメンじゃないと嫌だ」
「わーかったわっ。じゃあラーメンな」
「うん」

これでよし。

落ち着いたところで、やけに周りがしんとしてることに気付いた。

まさかと思って顔を上げずに上目遣いで辺りを見渡したら、みんながこっちを見てニヤニヤ笑ってた。

やられた。

みんな僕たちのやり取りに注目してたみたいだった。
僕は一気に力が抜けて、テーブルに突っ伏した。

恥ずかしい。

「どーしたチャンミン?!どっか痛い?なぁおいっ!」

ユノが見当違いなことで慌て始めたから。

「疲れた!」
「だったら休憩伸ばすか?無理すんなよ?」
「やる!サボっちゃダメでしょ!」

僕がそう言ったら。

「もー、チャンミンてめんどくさい」

ユノの一言に、スタッフ全員笑い転げた。

そして僕たちはしばらくして、再びリハを再開した。


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