あなたのいいところ 2

ここでのお話はアタシの作ったフィクションです。
実際のエピソードをヒントにしたものもありますが
あくまでアタシの中にいるユノとチャンミンのお話です。


SIDE:CHANGMIN

去年のツアーで、ユノは泣いた。

レッドオーシャンが、白い海原に変わって。

その場所に辿り着けた喜びに、ユノは、忘れていた涙を取り戻した。

だから僕は涙を堪えて、ただ黙ってその横顔を見つめていた。

誰よりも頑張ったあなたに。
僕はその瞬間の全てを捧げた。

初めて知る、あなたの気持ち。

あなたはずっとこうやって、僕たちを見守ってきたんだね。





リハーサルのためにステージに向かう廊下で、歩くユノの背中を見ながら僕は思った。

僕とユノが、過去に嫌と言うほど思い知ったこと。

どんなに大切にしても、失ってしまうものがあるって。

だからユノはたぶん無意識に、全力で守ろうとしているんだ。
もう2度と失わないために。

あの時負った傷は、ユノの方が遥かに深い。

あなたのせいじゃないんだと。

何度そう言い聞かせても、ユノは寂しそうに笑って首を横に振った。

僕はたぶん、急ぎすぎたんだ。

あの時ユノが全力で守ってくれたことを、忘れちゃいけなかったんだ。




「なぁチャンミン」

前を向いたまま、後ろにいる僕にユノが言った。

「なんでわかった?」

あぁ、さっきの話か。

「何年一緒にいると思ってんの?」
「んー、9年?いや、違うな、10年?違うか?」
「いや、そこは重要じゃない」
「じゃあどこだよ」
「こんなに長い間四六時中一緒にいるんだから、ユノの考えてることくらいわかるでしょって話」

そう言ったら、ユノは立ち止まって俯いた。
だから僕も立ち止まった。

「そっか」
「うん」
「ダメだな、俺」

僕が何を言いたかったのかを理解して、ユノは自分を責めている。
僕は危うく、とんでもない間違いをおかすところだったのかもしれない。

ユノにとって日本のスタッフは、何年も時間をかけて信頼関係を築いてきた韓国のスタッフとは違う。
ユノは二人になってからも変わらず支え続けてくれる日本のスタッフに心の底から感謝し、大切に思っているに違いない。

なのに僕は、韓国でのリーダーとしてのユノを押し付けていたんだ。

「とにかく、行きましょう」

もう一度仕切り直しだ。

ユノの肩を抱いてステージへ促したら、ユノは気を引きしめるように顔を上げて歩き始めた。



ステージでリハを重ねながら、隣りで踊るユノを目の端で追う。

あー、この人は本当に、ステージに立つために生まれてきたんだな。

東方神起の将来も、そして僕の将来までも背負って。
二人で歩き始めてから東方神起が正念場を迎えた今、ユノは1人でどれだけのプレッシャーと戦っているんだろう。

なのに僕は…。


演奏が終わって、ステージ上で僕たちは動きを止めた。

何気に顔を上げると、ユノが客席に向かって何かを言いかけていた。

ユノはまた、1人でプレッシャーと戦おうとしてる。
そう仕向けたのは僕だ。

僕が無理矢理背中を押した。

遠くからステージを見てるSAMさんに、ユノは意を決して言葉を吐き出す。

「今のところなんですけど…」

ユノを引き寄せて黙らせてしまいたい。
でもそれじゃだめなんだ。

だから僕は、その先の言葉を強引に奪った。

「正直言って、かっこよくないと思います」

ただ、ユノを守りたかった。
それだけだった。

なんで気がつかなかったんだろう。

僕がユノの背負った荷物を、ほんの少し持ってやれば済むことだったのに。

「待って。今そっち行くから」

SAMさんが、そう言ってマイクを切った。

少し沈黙が流れて、ユノがこっちを見た気配がした。

「チャンミン」
「なんですかー」

もー、こっち見るな。
どんな顔していいかわからないじゃないか。

「なー、チャンミンて」
「だからなにっ」
「今日はラーメン、二人で食いに行くか」

驚いて顔を上げたら、ユノは俯いていた。
でもその横顔は、照れ臭そうに微笑んでいた。



あれからユノは夢中になって、自分の頭の中にあるフォーメーションをみんなに伝えた。

僕は余計なことをしたと後悔した。

だってそこからの練習量が、マジで半端なかったんだ。

ダンサーさんたちも必死で食らいつくようにして、ユノのフォーメーションを体に叩きこんでいた。

地獄のような練習が終わって、僕は床に体を投げ出した。

大の字になって屋根を見上げながら、そー言えばコレってユノがよくやってたっけ、と思った。

「ふーん、なるほどー」

って言ったけどユノの気持ちはさっぱりわからない。

わからないけど、ユノの見ているものを僕も見ているんだと感じた。

同じものを見て、同じものを目指すことに意味があるんだと思ったら、少しユノがわかった気がした。





練習がはけて、僕とユノはこっそり抜け出してタクシーに乗り込んだ。

ラーメンを食べるために。

「ちょっとユノ、オーラ消してっ」
「は?」

なんでだろう、ユノはやたらと目立つ。
特別派手な服を着ていなくても、なぜかみんなが振り返るんだ。

日本では僕たちに対するガードがしっかりしてて、その反面勝手な行動は許してもらえない。

だから僕たちは、まるで親に内緒で夜遊びする中学生みたいなマネまでしたのに。

「あんた目立つんだってっ」
「それはお前もだろ」

確かに僕はデカい。
でも絶対目立つのはユノだ。

デニムの短パンにTシャツにサンダルばき。
なんてことないキャップ。

なんでこれで目立つんだ?!

「ダメだ、コソコソしても絶対目立つ」
「だったらもういーじゃん。日本だしバレねーだろ」
「僕たち二人でラーメン屋にいるとこを写メにでも撮られたら、即ツイッターで激流が起きるじゃないかっ。しかもデートとか言われるに決まってるしっ」
「別にいーじゃんそれくらい」
「僕は嫌だ!」
「じゃあどーすんだよ。やめるか?」
「それもいやだ。負けた気分になる」
「ったくチャンミンてめんどくさい」

そう言ってユノは、クソ狭いタクシーの後部座席で足を組んだ。

長すぎて邪魔だから組むな。

ムカつくから僕も組んだら、余計狭くなってイライラした。



店の前にタクシーを止めて、僕たちは作戦会議をした。

「いい?店に入って右側の奥が個室だから。客席に背中向けて壁伝いに歩いて素早く個室に逃げ込む」
「わかった!まかせろっ!」

ユノはノリノリだ。
それが一番不安だった。


案の定、店に入った途端ユノがもたついた。

「ちょっと、早く行ってよっ」
「横歩きって難しいんだけど」

運動神経はいいくせに、誰にでもできそうなことには鈍臭い。

「あんたのダンスのがよっぽど難しいでしょっ。早く行けっ」

イライラして肩で押したら。

「もー、押すなよチャンミン」

と、デカい声でユノが言った。

「ちょっ!」

ヤバい。

しかも。
あれ、東方神起じゃない?の声に。

「え?」

ユノは思いっきり振り向いた。


結局バレバレの中、僕はユノの背中を押して個室に逃げ込んだ。

ラーメンをすすりながらユノが言う。

「なーなー、なんでバレたんだ?」
「ユノが僕の名前呼んだからでしょ!」
「有名人だなチャンミン!」
「じゃなくて!チャンミンなんて名前日本にないから!」

しかも呼ばれて振り返ってるし。
幼稚園児か。

「そっか、じゃあかきやんて呼べばよかったな」
「やめろ!僕がかきやんになったらどーするんだ!」
「え?ならねーだろ?」
「なるわけないでしょ!」

真面目に返すなっ。

ったく!

かっこよくて頼れると思っていたら、とんでもなく手のかかる人で。

「それよりどう?フォーメーション。イメージ通り?」
「うん」
「よかった」

憧れだった存在は、誰よりも大切な存在に変わった。

腹が立つことの方が多いのに、何度喧嘩しても必要だと思い知る。

何なんだろうな、ユノって。

「やっぱ俺、チャンミンの歌好きだわ」
「急になに?」
「リハで聞くたびに思うんだよ。明日は客席に座って聞こうかな。おっ、それいいなっ。すげー贅沢じゃん?」
「何1人で盛り上がってんの」

自分では足りないものばかりだと思う僕を、ユノは大袈裟なくらい褒めてくれる。

それは素直になれない僕には、ちょっと居心地が悪くて。

でもそれがユノのいいところ。
人の悪いところより、いいところを見て。

嫌いな人を作らずに、大好きな人を増やしていく。

「あんまり人前で言わないでよ、恥ずかしいから」

そう言ったら。

「いーじゃん。チャンミンの歌は俺の自慢なんだから」

なんてまた、そんなセリフを恥ずかしげもなく言う。

なにゆってんだ。
あんたのダンスこそ僕の自慢なのに。

ユノが人前で踊った瞬間に沸き起こる歓声が好きだ。

僕が唯一素直になれるのは、ユノのダンスが絶賛された瞬間。

満足げな僕の表情は有名らしくて、いつもカメラに抜かれる。

世界一のユノペンの座と、ユノの隣は誰にも譲らない。

でもそれさえ本当は、ユノが守ってくれている。
自分には僕が必要なんだと。
そう人前で口にすることで、僕を守ってくれているんだ。

「ユノにはかなわないなー」

思わずつぶやいたら。

「は?なにが?」

言いながらユノが、僕のチャーシューを勝手に食べた。

「あんたまだ自分のチャーシュー残ってるでしょうがっ」
「チャンミンのチャーシューが食べたかったのっ」
「同じ味じゃないかっ」
「わかってるわっ」

そう言って僕の丼に自分のチャーシューを2枚入れた。

「利子はいらない」
「もういらないから食ってよ」

ユノといると、優しい気持ちになる。

手がかかるし無茶ばっかりするし自由すぎるし。

でも。

アーティストとしても、人としても。
こんなに素晴らしい人はいないと思うんだ。

「俺、チャンミンいないとダメだと思う。だから、腹が立つことあるだろうけど、頼むな」
「ユノもね」
「うん」

だから僕は、あなたのいいところを守りたい。
お互いそうやって支え合うのが、僕たち二人の東方神起なんだろうなと思うんだ。

ですよね?ユノ。





続編はこちら→「おまえのいいところ 1



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本家「東方神起~Red Ocean of eternity~
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このコメントは管理人のみ閲覧できます

2014/10/15(水) 03:00:07 | | [ 編集]

とも

あたしの方が遥かにお姉さんだからりこさんと呼ばせて下さい。

いいお話でした。
っていうか感動しちゃいました。
二人の雰囲気が温かくって。

ありがとうございます。

2014/10/15(水) 16:08:16 |URL | [ 編集]

りこねぇ

鍵コメ 〇〇〇〇さん(ローマ字4文字)

こちらにも来ていただけるなんてうれしいです。
そして、貴重なお話ありがとうございます♪

普通の方のお話は素の二人の様子がわかりますね。
芸能人ぶらず飾らないのは本当にアタシの中にある二人の姿そのものです。

2人がプライベートでどんな様子かがよくわかって参考になりました。
ボチボチですが続けていきますので、これからもよろしくお願いします(〃▽〃)

2014/10/15(水) 22:32:25 |URL | [ 編集]

りこねぇ

ともさん

アタシお若くないですが、どうかお好きに呼んでやってくださいww

トンペンの皆さんが、ほっこりできるようなお話を書きたかったんです(〃▽〃)

また、こうやっていろんなユノチャミを書いていきたいと思ってるのでよろしくお願いしますね♪

2014/10/15(水) 22:35:39 |URL | [ 編集]

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