第1章 2

このお話はフィクションです。
5人時代も好きですが、批判的に取られる可能性もあります。
それでも読んでいただける方のみ、下記へお進みください。








SIDE:CHANGMIN


ユノヒョン以外のヒョンたちが、家族と一緒にサイドビジネス的なものを始めたことは知っていた。
もちろん僕もユノヒョンも誘われたけど、僕はそのビジネスの内容が胡散臭く感じられて断った。
ユノヒョンは元々あまりお金に興味がなかったし。
だから3人が事務所に許可をもたっらと聞いた時も「じゃあ頑張れ」と言ったきり興味はなさそうだった。

嫌な予感はしていたんだ。
でも僕は考えたくなくて、そんな不安を無理やりねじ伏せた。

本当にそれまで僕たちは上手くやってて、何にも変わったことなどなかったのに。
いきなり雨雲が空を覆うように、僕たちの間に翳りが見え始めたんだ。



それまで愚痴程度しか聞いたことなかったのに、3人のヒョンがいきなり専属契約無効通知を事務所に提出した。


専属契約無効通知とは、事務所と僕たちの間で交わされている13年間の専属契約を無効にしろという通知だ。

「なんであんなもの提出したの?!」

宿舎に戻るなり、僕はテーブルを叩きつけて怒鳴った。

「落ち着けよチャンミン」
「は?落ち着けってどうやって?なんで僕はそんな大事な話を他人から聞いてるの?!」

何も聞かされてなかった。
サイドビジネスを始めてから、事務所ともめてたらしきことは全員の親が事務所に招集されたことでわかっていた。

それでもヒョンたちは僕に変わらず接してくれてたし、ついさっきまでいつものようにじゃれ合ってさえいたんだ。

「言ったら反対するだろ?」
「当たり前でしょ?!今すぐ取り消してよ!早くっ!」

どんな不満があったって、専属契約の無効なんて僕の常識ではあり得なかった。
だって僕たちをここまで育て上げるのに、事務所がどれほど尽力してくれたかは僕たち自身がよくわかっているはずのことだ。

「説明するから落ち着けって」
「説明なんかいらない!」

ついこの間、事務所と契約内容について見直したばかりじゃないか。
その時には不満なんて言ってなかったくせに。


「俺たちのためなんだよチャンミン」
「俺たちのため?そこに僕とユノヒョンは入ってるの?」
「あたりまえだろ?」
「嘘つくな!あんたら3人が自由に金稼ぎたいからダダこねてるだけじゃないか!」

頭の血管が切れそうだった。
もう口を突く言葉に見境なんてなかった。
息をするのも忘れて吐き出した言葉は、3人のヒョンたちの胸に確かに突き刺さった。


肩を大きく上下させる、僕の荒い息遣いだけがリビングの空気に響く。

「チャンミン。おいで」

鎮めるように肩に置かれた手が、僕を抱き寄せた。
僕はその手の力に導かれるように、すとんとユノヒョンの横に座った。

座っても、ユノヒョンの手は僕の肩に置かれていた。
その掌の温もりで、僕の呼吸は次第に落ち着いて行った。

「ユノ、聞いて」

懇願するように一人のヒョンが言う。
ユノヒョンはただ黙って、その人の声に振り返った。

「ユノ、俺たちは、バラバラになってもいいなんて思ってないんだ。ずっと5人で東方神起をやっていきたい。ただ、俺たちにはやりたいことができたから、それを事務所に認めてほしいだけなんだよ」
「だからってこんなやり方して、今まで通りやっていけると思ってるのか?」
「だから、そうなるように頑張ってるんじゃん!」

多分その言葉に嘘はない。
いろんな人の言葉に流されて、こんなことになったんだろう。
そして、それでも東方神起を続けられる方法があるとでも言われたんだろう。

なんて浅はかなんだ。
情けなくて、僕は苛立ちを抑え切れなかった。

「専属契約の無効って意味わかってる?!脱退したいってゆってるのと同じだよ?!だいたい契約書にハンコ押したのは自分でしょ?!それは絶対で、自己責任なんだよ!なのに気が変わったからなかったことにしてくれなんて、そんなこと平気て言えるから芸能人はバカだって言われるんだ!」
「チャンミンだって芸能人だろ?!」
「一緒にするな!」

言ってはいけない本音だった。
僕はいつも心のどこかで、芸能界に染まりたくないと思っていたのは事実だ。

「チャンミンは俺たちのこと、馬鹿だと思ってたのか?」
「思ってなかった。でもヒョンたちが今やってることは、馬鹿だと思う」

芸能界と一般社会の常識は全く違う。
そして一般社会に出ることなく芸能界に入った人は、一般社会の常識を知らない。

僕はそうなりたくなかったから、勉強したり一般人の感覚を失わないよう努力してきたんだ。

「チャンミンにそんな風に見られてるとは思わなかった」
「僕もヒョンたちがこんな馬鹿なことするとは思わなかった」

僕はもう気遣いなどできなくなっていた。

「どうせ誰かにそうしろって言われたんでしょ?利用されてるの、わかってる?」

大好きな人たちなのに。
それは、今も変わらないのに。

「その人たちは東方神起のことなんか考えてないよ?それともヒョンたちもそうなの?」

悔しくて、情けなくて、後から後から酷い言葉が溢れて…。

「そんなにお金が大事?でも東方神起は金じゃ買えないんだよ?それくらい馬鹿でもわかるよね?」

もう嫌だ…誰か止めて…。

「チャンミン」

横から伸びた手が、僕の頭を掴んで引き寄せた。
無抵抗に倒れたら、おでこがユノヒョンの肩に触れて止まった。

そしたらユノヒョンのシャツがじわっと濡れて、初めて自分が泣いてる事に気付いた。

「チャンミン、もういい。泣くな」

僕のつむじに頬を擦り付け、なだめるように背中を撫でてくれる。

触れた場所全部から優しさが伝わって、無意識に溢れた涙が堰をきった。

「とりあえず今日はここまでだ」

そう言ってユノヒョンは僕を支えて立ち上がる。

寝室に向かうユノヒョンの背中に、ヒョンたちの1人が声をかけた。

「ねぇ、ユノ。ユノは俺たちが事務所を出ることになったらどうする?」

一緒についてきてくれるかと問う言葉に。

ユノヒョンは静かに正面から見据え、一言だけ返した。

「…連れ戻す」



ユノヒョンの部屋に連れられて、ドアを閉めた途端に僕は大泣きした。
食らいついて泣いたから、ユノヒョンのシャツは僕の涙でグチャグチャだった。

「なんでこんなことになっちゃったの?」

ひとしきり泣いてから、僕はユノヒョンに引っ付いたままで言った。

「なんでだろうなー。でも心配すんな。俺がなんとかするから」

ユノヒョンが、僕を抱きしめながら左右に揺れる。
だから僕まで左右に揺れて、チークダンスみたいになっていた。

酔うからやめろ。

「僕、酷い事言った…」
「だな。あれはさすがに効いただろww」
「仲直りできなかったらどうしよう」
「んー?じゃあ、俺がおまえらの頭を1発ずつ殴っておしまい」
「…痛いのヤだ」
「我がままだぞチャンミンww」

その夜、一つのベッドに並んで、僕たちはたくさん話をした。
そしていつの間にか寝てしまい、朝起きたらユノヒョンの抱き枕にされていて身体中が痛かった。



翌朝、相談なんてしなかったけど、僕とユノヒョンは暗い顔なんてしないで、お互い普通にふざけたりしていた。

そんな僕たちの様子を3人が気にしているのはわかっていた。

気を使いながらこちらをチラチラ見やる視線と、今は無理だと諦めてわざとらしく逸らした視線と。

そして、僕に寄り添うユノヒョンを伺う視線。

ついこの間までユノヒョンを独占していたのは自分だったのにと。
あからさまに視線がそう言っている。

「ユノヒョン、これ美味しい」
「どれ?」
「これ」
「むぐっ。いきなり口に突っ込むなよ」
「あはは!ユノヒョンのほっぺの皮、伸びすぎw」

だから僕は、甘えるようにユノヒョンの肩に頭を乗せた。
思い知ればいいと思った。
今、手放そうとしてるものの大切さを。

きっとみんな、ユノヒョンに甘えてるんだ。
何をしてもユノヒョンは、自分たちを見捨てることはないって。

だから僕が教えてやるんだ。

ユノヒョンが捨てられないのは、あんたたちじゃなくて東方神起だってことを。


そしてこの日。
誰かが僕とユノヒョンの背中を押して、地獄の底に突き落としたんだ。



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